歌は丁寧に歌えばいいわけじゃない?アップテンポの曲で「雑さ」を活かす方法

「歌は丁寧に歌いましょう」

ボイトレを始めてから、私はそんなことを何度も意識してきました。

歌詞をきちんと発音する。

語尾まで丁寧に歌う。

音程を外さない。

言葉をしっかり届ける。

もちろん、どれも大切なことです。

ところが、アップテンポの曲を練習していると、先生から意外なことを言われました。

「アップテンポの曲は雑になりがちだけど、その雑さも味になります」

「えっ、雑でいいの?」

最初はそう思いました。

しかも、その後のレッスンでは、

「今度は一旦、全部雑にしてみましょう」

という指示まで。

丁寧に歌うことを意識していた私にとっては、ちょっとした方向転換です。

ところが、実際にやってみると、これが面白い。

歌には、全部を丁寧にするのではなく、あえて荒さを残したほうがいい場面があるようです。

今回は、サザンオールスターズの『希望の轍』を練習したレッスンを通して、アップテンポの曲で「雑さ」をどう活かすのかを考えてみます。

「丁寧に歌う」ことを意識しすぎていた

これまでのレッスンで、私は「言葉を大切に歌う」ということを意識してきました。

アップテンポの曲では、テンポが速いので、歌詞が雑になりやすい。

だからこそ、一つひとつの言葉を大切にする。

これは以前教えてもらった大事なポイントです。

ところが、それを意識するあまり、今度は別の問題が出てきました。

『希望の轍』を通して歌ったところ、先生から、

「だいぶ波が出てきていいですね」

という評価。

歌に勢いが出てきたことは良かったようです。

ただ、そのうえで、

「アップテンポの曲は雑になりがちで、その雑さも味になる。丁寧な部分を加えるといい」

というアドバイスをもらいました。

ここで私は、

「全部を丁寧に歌えばいいわけではないんだ」

と気づきました。

丁寧すぎると、アップテンポの勢いが消える?

アップテンポの曲を歌うとき、すべての言葉を丁寧に発音し、すべての語尾をきれいに処理し、すべての音をきれいに伸ばそうとすると、どうなるでしょうか。

もちろん、きれいには聴こえます。

でも、場合によっては、

「きれいだけど、勢いがない」

という歌になってしまうことがあります。

特にロックやポップスなど、スピード感のある曲では、少し荒々しい感じが曲の魅力になることがあります。

今回の『希望の轍』でも、先生が言っていた「雑さも味になる」というのは、そういうことなのだと思いました。

雑にすることが目的なのではなく、

曲の勢いを残すために、あえて整えすぎない。

そんなイメージです。

では「雑に歌う」とはどういうこと?

ここが難しいところです。

「雑に歌ってください」

と言われても、

「適当に歌えばいいの?」

となってしまいます。

私もそうでした。

でも、今回のレッスンでは、実際に一度「全部雑にする」という方法を試しました。

その結果、少し分かったことがあります。

雑に歌うというのは、

  • 音程を適当にする
  • 歌詞をいい加減にする
  • リズムを無視する
  • 声を荒らす

ということではありません。

むしろ、

必要以上に丁寧に処理しない

ということに近いのではないかと思います。

一度「全部雑」にしてみる

先生から、

「ちょっと一度、ゆっくり歌ってみましょう」

ということで、細かく歌い方を確認してもらいました。

すると、

「今は言葉の終わりの処理が均一に丁寧になっています」

という指摘。

確かにそうでした。

私は、歌詞の一つひとつを同じように丁寧に処理していたのです。

そこで先生から、

「一旦、全部雑にしましょう」

という指示。

ここはもう、考えすぎずにやってみました。

「いいや、言われたとおり、やっちゃえ」

と、思い切って雑に歌います。

すると、

「いい感じ」

とのこと。

なるほど。

全部をきれいに歌うより、曲の勢いが出てきます。

「丁寧」と「雑」は反対ではない

ここで重要なのは、

丁寧=良い
雑=悪い

ではないということです。

曲によって、必要なものが違う。

アップテンポの曲なら、

「ここは勢いを優先する」

「ここは言葉をきちんと届ける」

というように、使い分ける。

つまり、

丁寧さと雑さを両方持っておく。

これが大切なのだと思います。

全部が丁寧だと、平坦になる。

全部が雑だと、何を歌っているのか分からなくなる。

その間に、自分なりのバランスを作る。

今回のレッスンでは、そんなことを教えてもらったように感じました。

「言葉を大切に」と言われたのに、今度は「雑に」

ここで、私の中では一つ混乱が起きました。

以前のレッスンでは、

「途切れた言葉であっても、文章として伝えるように」

ということを教えてもらいました。

ところが今回は、

「一旦、全部雑にしてみましょう」

です。

「どっちなんだ?」

と思いました。

丁寧にするのか。

雑にするのか。

自分の中で、こんがらがってしまいました。

でも、実際に両方やってみると、少し見えてきます。

大切なのは、

言葉を丁寧に発音することそのものではなく、歌詞の意味を伝えること。

そのために、ある部分では丁寧に歌い、ある部分では勢いを優先してもいい。

「丁寧に歌う」という技術が目的になってはいけない。

そんなことなのだと思います。

「切る」「伸ばす」にも意味が必要

今回、さらに重要な指摘がありました。

歌の中では、

「ここを切る」

「ここを伸ばす」

という歌い方をします。

私も先生から言われれば、その通りにやります。

ここは切る。

ここは伸ばす。

ところが先生から、

「切ったり、伸ばしたりしているのに意味がついてくるとさらにいい」

というアドバイス。

これには納得しました。

確かに、

「先生に切れと言われたから切りました」

「伸ばせと言われたから伸ばしました」

では、聴いている人には、その理由が伝わりません。

なぜそこで切ったのか。

なぜそこを伸ばしたのか。

何を伝えたくて、その歌い方を選んだのか。

そこまで考えて初めて、表現になるのだと思います。

「雑さ」にも意味を持たせる

今回のテーマである「雑さ」も、同じなのかもしれません。

ただ適当に歌うのではなく、

「ここは勢いを出したいから、あえて整えすぎない」

という意図がある。

そうすると、「雑さ」が表現になります。

例えば、

  • スピード感を出したい
  • 若々しさを出したい
  • ロックっぽさを出したい
  • 勢いを止めたくない
  • 感情が先に走っている感じを出したい

そんな場合には、あえて少し荒さを残す。

これなら「雑に歌う」という言葉にも意味が出てきます。

アップテンポの曲では「全部をきれいにしない」

私が今回、一番覚えておきたいと思ったのが、

「全部をきれいにしなくていい」

ということです。

歌の練習をしていると、どうしても、

「もっときれいに」

「もっと正確に」

「もっと丁寧に」

となってしまいます。

でも、完成度を上げることだけが歌の目的ではありません。

曲によっては、

少し荒い。

少し雑。

少し勢い任せ。

そんなところが魅力になることもあります。

特にアップテンポの曲では、全部を整えてしまうより、勢いを残したほうが曲らしくなる場合があります。

ただし「雑にする」と歌詞が伝わらなくなる危険もある

一方で、雑さには注意も必要です。

何でもかんでも雑にしてしまえばいいわけではありません。

歌詞が聞き取れなくなる。

リズムが崩れる。

音程が不安定になる。

そうなってしまえば、単なる「雑な歌」になってしまいます。

だからこそ、

雑にする部分と、丁寧にする部分を選ぶ。

ここが重要になります。

今回の先生のアドバイスも、

「全部雑でいい」

という意味ではなく、

均一に丁寧になっている状態から一度離れてみる

という意味だったのだと思います。

自分で「どう歌いたいか」を決める

そして、今回もう一つ大きな反省がありました。

私はこれまで、

「ここはこう歌ってください」

と言われると、その通りに歌おうとしてきました。

もちろん、レッスンではそれが大切です。

でも、それだけではいつまでたっても、

「先生に言われたから、そう歌っている」

という状態から抜け出せません。

今回、

「切ったり、伸ばしたりすることにも意味を持たせる」

と言われて、

「自分はこの曲をどう歌いたいんだろう?」

と考えるようになりました。

これは、今後の大きな課題になりそうです。

先生から教えてもらったことを、そのまま再現するだけではなく、

教えてもらったことを材料にして、自分の歌い方を作っていく。

ここまでできるようになりたいと思います。

「雑さ」を活かすための練習方法

今回の経験から、アップテンポの曲で「雑さ」を活かす練習を考えてみました。

STEP1 まず普通に歌う

最初は、いつもの歌い方で歌います。

録音しておくと比較しやすくなります。

STEP2 全部を丁寧に歌ってみる

逆に、歌詞の語尾まで全部丁寧に歌います。

これも録音。

STEP3 今度は全部雑にしてみる

「適当に」ではなく、

「必要以上に丁寧にしない」

という意識で歌います。

STEP4 聴き比べる

「全部丁寧」

「全部雑」

「いつもの歌」

を聴き比べます。

すると、自分にとってどこが違うのか分かりやすくなります。

STEP5 丁寧にする場所を選ぶ

最後に、

「ここは歌詞をしっかり伝えたい」

「ここは勢いを優先したい」

というように、場所ごとに決めます。

これができると、歌にメリハリが出てきます。

歌は「正しく歌う」だけでは完成しない

今回のレッスンで改めて感じたのは、

正しく歌うことと、魅力的に歌うことは同じではない

ということです。

音程が合っている。

歌詞が聞き取れる。

リズムが正しい。

もちろん、これらは大切です。

でも、それだけでは「どう歌いたいのか」が伝わりません。

あえて声を荒くする。

あえて言葉を短く切る。

あえて伸ばさない。

逆に、ここだけは丁寧に歌う。

そうした選択が積み重なって、歌の表現になっていく。

今回の「雑さも味になる」という先生の言葉は、そんなことを考えるきっかけになりました。

まとめ|「雑に歌う」のではなく「雑さを選ぶ」

今回のレッスンで教えてもらった、

「アップテンポの曲は雑になりがちで、その雑さも味になる」

という言葉。

最初は、「雑でいいの?」と思いました。

でも実際にやってみると、全部を丁寧に歌うよりも、曲の勢いやスピード感が出てきました。

大切なのは、

雑に歌うことではなく、雑さを表現として選ぶこと。

そして、

  • ここは丁寧にする
  • ここは勢いを優先する
  • ここは切る
  • ここは伸ばす

というように、自分で意味を持たせること。

今回のレッスンでは、そこまで自分で考えなければ、本当の意味で「自分の歌」にはならないのだと感じました。

これまでは先生から、

「ここはこうして」

と言われると、その通りにすることに一生懸命でした。

これからは、

「自分はこの曲をどう歌いたいのか?」

を考えながら歌っていきたいと思います。

『希望の轍』を通して、発声だけでなく、歌い方そのものについても、少しずつ考えることが増えてきました。 


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